tebikae

て‐びかえ【手控】 〘名〙 ①心おぼえに手許に控えておくこと。おぼえがき。また、それを書く手帳。[日国]

欲しがりましょう、負けたって。

誕生日プレゼントに欲しいものある?と母に訊かれた。一週間くらい考えているのだけれど、思いつくのはジップロックとかトイレットペーパーとか無洗米とかそんなものばかりで、ちょっと焦っている。

 

ものをねだることが不得手なのはわりと昔からだ。満足のハードルが低いのか実際満ち足りているのか、たぶんその両方なのだと思う。

でも、一人暮らしを始めた頃は、コーヒーメーカーとか湯沸かしポットとか炊飯器とか、欲しいものがたくさんあった。同じ生活に必要なものでも、ジップロックみたいな消耗品じゃなく、もっと長く使えるものが、いろいろ欲しかった。それが、最近は、長く使えることが煩わしく思えてしまう。

コーヒーメーカーも湯沸かしポットも炊飯器も、必要なのは今のこの生活をしばらく続けることを前提とした場合で、そう考えると、私は本当にこの感じのまま何年も暮らすのか……?と、二の足を踏んでしまうのだ。

 

実家を出て、今の部屋に引っ越して、もうすぐ二年になる。契約の更新が近付いていて、つい先日、不動産屋さんから案内の紙が届いていた(本当に紙一枚、封筒も何もなく剥き出しでぴらっとポストに入っていたのでびっくりした)。

二年あったら、もう少し、生活に変化があるかと思っていた。何なら、この部屋を出ざるを得ないような変化が。

だけど私の身のまわりはびっくりするくらいそのままで、職場も同じ、仕事の担当も、やっていることもほとんど変わらない。着ているものもさほど入れ替わっていない。近いうちに暖簾でも買おうと思っていた台所と居室の間の鴨居には、間に合わせの布が下がったままだ。

 

そんな風に、ぼんやりと日々を過ごすうちに、欲だけでなく、なんというか、数か月くらい後より先があるという実感が、いつの間にか、薄らいでしまった。必要だと確信の持てる最小限のものだけを欲しがり、解決しなければ本当にどうにもならない目の前の問題だけを見たがるようになっている気がする。これは、よくない。欲もないし良くもない。というか、いやだ。

 

今回は、おそらくこのまま契約を更新して、ここに住み続けることになるだろう。引っ越すには日にちが迫りすぎているし。そうすると、次の更新は2020年。誕生日に契約しているので、ちょうど30歳になる日だ。

二十代最後の二年。この部屋をよりよくするために欲しいもの、自分の毎日をよりよくするためにしたいこと、もう少し真剣に考えたいな、と思う。